shirakawa go around

18.02.08

Shirakawa Go Around編集部

村のしごと

「人のために」が詰まった暖かい喫茶店

白川郷のバスセンターを降りてすぐ目の前に、白川で古くから愛されてきたおふくろの味を堪能できるお店がある。「喫茶さとう」だ。

「喫茶さとう」の外観

 

お店で提供されているメニューは、佐藤登さん(79)と佐藤直子さん(73)が心を込めて手作りしたものだ。使用しているお米や野菜は全て、無農薬で育てた自家製で、山菜、とちもちなどは、白川村の四季折々の食材を使って作られている。

「喫茶さとう」のメニュー

 

 

大切にしているおもてなしの心

 

喫茶さとうは、白川村荻町で育った登さんと小白川出身の直子さんが2003年に創業されたお店だ。

家の建て替えと、登さんの定年退職のタイミングに合わせて、思い切って喫茶店を始めることにした。地元・白川の料理を残したい、白川に訪れた人に1品でも多く白川の料理を食べてもらえたら、という思いがお店を始める動機になった。

 

お店を始めた当初は「そばだんご汁」自体が普及しておらず、お客様はとても少なかったという。だが、白川の「おふくろの味」は一度食べたら忘れられない!と、とたくさんの方を虜にしていき、今では村の方はもちろんのこと、はるばる大阪や名古屋から来るリピーターのお客様も多い。

 

取材当日も偶然こんなことがあった。

近所の方からの口コミで「喫茶さとう」を知り、3年ほど前にも一度来たことがあった大阪からのお客様がいた。「大変なこと、つらいことがあっても、直子さんに会いに来ると元気が出る」と、直子さんと直子さんの味にもう一度会いに、はるばるご来店されていた。直子さんと会話し、再会を泣いて喜んでおられる姿に私も目頭が熱くなった。

再会を喜んでいる直子さん(左)と大阪から来られたお客様(右)

現在白川には、年間180万人もの観光客が訪れているが、うち過半数は外国人のお客様だ。メニューには英語や中国語も並んでいるが、やり取りはすべて直子さんが身振り手振りでお客様に伝えている。まったく外国語を話せなくても、直子さんの思いが伝わるのか、お客様もニコニコしながら何とか「直子さんが話していることをくみ取ろう」としている姿がとても印象深かった。外国人のお客さんはマナーが…という声も観光地ではよく聞こえてくるが、食べ終わった後の食器をわざわざ運んできてくださる外国人の方もおり、直子さんのおもてなしの心が伝わってるからこそ、外国人の方も自然とこのようなふるまいになることが感じ取れた。

 

喫茶さとうの名物料理 〜郷土料理の「そばだんご汁」〜

そばだんご汁セット

 

もともと白川は田んぼとして使える広い土地がなかったため、山の中を開拓して急斜面でも育つヒエやアワ、ソバなどの雑穀を育て、それを粉にして加工して食べる習慣があった。そのころから食べられてきたのが郷土料理の「そばだんご汁」だ。「喫茶さとう」では、そば粉、もち米、米粉を混ぜて作った「そばだんご」と、昆布だし、かつおだしをミックスさせたつゆを合わせて作る。隠し味はなく、だし汁以外は何も入れないそうで、この素朴な味こそが、多くの方に「懐かしい」と思わせる由縁だ。

 

飲食店で食べられるそばは、一般的には乾麺や冷凍麺をゆでて提供しているものも多い。だが、「喫茶さとう」では、「そばだんご」は、そば粉から作ることにこだわり、提供されているわらびや山菜は、この年になっても、山まで採りに行く。また、この地域では昔からそば粉を、お餅やそばだんごにして食べられてきたため、「喫茶さとう」では、その慣習を大事にしている。「そばだんご汁」を食べられる飲食店は、白川村では「喫茶さとう」のみだという。白川に訪れた人に1品でも多く白川の料理を食べてもらいたい、という気持ちが強いからこそ、手間暇のかかった愛情こもった料理が提供されているのだ。

 

「喫茶さとう」に対する思い

 

直子さんがあるエピソードを聞かせてくれた。

 

『東京からお土産をもってバイクのお兄ちゃんが月1度のペースで来てくれていたんだけど、ぱったり来なくなったんだ。でも、ひょっこり顔出してくれたことがあって、そのときに「肝臓がんで来られなかったんだ」って教えてくれて。「病院にいるときに、絶対に元気になって、そばだんご汁を食べに行くんだ、って病気と闘ったんだ、念願が叶ったんだ」って言ってくれたんだ。』

 

『このカウンターに置いてある(写真の)人形はね、「今は病気で作れないけれど、元気になったら(人形を)作って送るね」と約束をして帰った大阪のお客さんから送られてきたものなんだ。』

お客様から送られてきた手作りの人形

 

 

『たかが「だんご」だけれど、こういういろんな人たちの思いがあるから、手抜きはしたくないし、いい加減にはやれない。そんなんで金儲けできるか、って、知り合いや友達に「アホか」と言われる。でもこうやって来てくれる人がいるし、何とかして白川のものを残したいっていうのが私の夢やから。何を言われようが私の夢やから。』

 

「喫茶さとう」には、白川の料理を残したいという直子さんの純粋な夢と、『また直子さんに会って「そばだんご汁」を食べたい』というリピーターの思いが詰まっているような気がした。

 

今後このお店をどうしていきたいですか、との問いに対し、「こんな小さい店、今の若い子は誰も継がんだろう」と直子さんは笑って答えたが、これは本心ではないに違いない。

 

人生山あり谷あり、疲れたときや心の傷を癒したいときに、直子さんと「そばだんご汁」を思い出す人は一体何人いるのだろう。商売として儲けたいから、という気持ちではなく、喫茶店を経営することで、多くの方の心の支えになる活動をしてきた直子さんの生き様がとてもかっこいいと感じた。

お客様との会話を楽しむ直子さん

 

 

喫茶さとう

【問い合わせ】TEL 05769-6-1432

【営業時間】9:00-17:00

【定休日】不定休

【所在地】岐阜県大野郡白川村 荻町1163-1

【HP】http://satou-shirakawa.wixsite.com/satou-shirakawa

 

この記事を書いた人

武井 彩夏

群馬県出身、25歳。

2年9カ月の社会人経験を経て、現在は、農家のお嫁さんになるために全国を飛び回り中!

地域に入って特産物のPRをしたい!ので、素晴らしい地域があったら教えてください!(笑)

 

※本記事は1月15日~28日に白川郷ヒト大学のインターン生によって製作されました。

 

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