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17.09.22

Shirakawa Go Around編集部

村のしごと

また、来ます!が言いたくなる場所。”白川郷がすき”そんな気持ちをシェアする仕事

四季を感じることのできる場所、白川郷

 まだまだ日差しの強い9月頭。都会的な金沢駅から乗り込んだ、高速バスに揺られて1時間ちょっと。バスを降りると、都会とは対照的な、若草色の田んぼの背景に、まぶしいほど色鮮やかなハイビスカスと、真っ黄色のヒマワリが目に入ってくる。絵に描いたようにきれいな田舎の原風景からは、全身で夏を感じられる。三角屋根が印象的な世界遺産、合掌造りの家屋が並ぶ岐阜県白川村だ。

 合掌造りの家屋が並ぶ通りには、その風景を一目見ようと日本だけではなく海外からも多くの人が訪れる。観光客数は年間約180万人にのぼり、日本でも有数の観光地だ。

 白川街道の両サイドに軒を連ねるお土産屋さんはそれぞれのイチオシを売り出していて、行き交う観光客の手にはソフトクリームやコロッケなどおいしそうな食べ物が握られている。

 “今藤商店”はそんなにぎやかな白川街道の真ん中に位置するお土産屋さんの1つだ。

たくさんの人でにぎわう今藤商店

 今藤商店は、もともと酒屋が発祥であるため、お酒やお酒を使ったお土産をメインに販売している。店内の一角には立ち吞みコーナーもあり、取材中も窓の外のきれいな田んぼと行き交う人々の景色を見ながら日本酒を嗜む人の姿があった。

白川郷の水を使ったお酒
たくさんの種類のお酒を味わうことができる立ち吞み処

 

 たくさんの商品の中でも今藤商店のイチオシは何といってもどぶろく風ソフトクリーム。

 白川村では、「どぶろく祭」という伝統のある大きなお祭りが毎年行われており、祭りの数か月前からどぶろくという昔ながらの手法で作られた日本酒を大量に作りこみ、神様にお供えする。どぶろく風ソフトクリームはそんな白川村の代表的なお祭りを活かして商品をつくれないかという想いから生まれた。

 毎日国内外問わず、多くの人がこのソフトクリームを買いに今藤商店を訪れるほどの人気商品だ。

どぶろく風ソフトクリーム。ふりかけられたポン菓子は、どぶろくの米粒が残ったようすを表している

 

 そしてこのどぶろくソフトの生みの親。さわやかな笑顔が印象的な今藤商店3代目、今藤建二さんである

 

 建二さんはここ白川村の出身で、村外の高校へ通うため白川村を出た。その後、今藤商店を継ぐため、自らの意思で修行もかねてデパートで2年間接客について学んだ末、現在は3代目として経営を任されている。

 

好きなまちで楽しみながら働く

 今藤商店は立ち吞みもでき、訪れるお客さんと会話をする機会も多くある。今藤商店では、接客の中でお客さんとの距離感を大切にしている。

 訪れるお客様は日本人だけではない。ここ4,5年で外国人観光客も増えており、「初めは何を言っているのかわからず、怖ささえ感じていた」と健二さんは語る。そんな中でもあきらめず、聞こえた言葉を繰り返し口に出して1つずつ覚えていった。すると、徐々に相手の話す言葉の意味がわかるようになり、ジェスチャーも交えながらコミュニケーションがとれるようになってきた。

 今では、英語・中国語であれば外国から来たお客さんが何を伝えたいのか9割以上は理解できるようになった、と建二さんは語ってくれた。

 地元の人しか知らないおすすめスポットをお客さんに教えたり、リピーターさんとの再会に話を弾ませたりとお土産販売という接客の枠を飛び越えたコミュニケーションが今藤商店にはある。建二さん自身もそういったお客さんとのコミュニケーションが、喜びややりがいに繋がっているとおっしゃっていた。

「白川郷のいいところは合掌造りはもちろんですが何よりも、四季があることだと僕は思います。春は桜、夏は田んぼの緑、秋は稲穂の金色や紅葉、冬は雪をかぶった合掌造り。そういう白川郷ならではの変化を面白いと思ってもらって、夏に来た人が今度は冬に来たいと言ってくれることは一番うれしいですよね」と笑顔でお話してくれた建二さん。

 しかし、白川郷の冬は2メートル以上の雪が積もり、平常業務の前に雪かきという作業が入るため冬の営業は想像以上に大変だ。

 それでも、そんな自然の変化が感じられることが一番いいところだと笑顔で答えられるのはなぜなのだろうか。

 それは、建二さん自身が、白川郷に対して強い愛着を持って仕事をされているからこそ感じることのできる想いだと私は感じた。だからこそ、今藤商店を通じてつながった様々な人と白川郷の良さを共有できたときや、再び訪れてきてくれたとき、何よりもうれしく感じられるのだろう。先に紹介した建二さんの感じているやりがいは、このような「白川郷の良さを分かち合える」という喜びが根底にあるのだろう。

 家業を継ぐことに対しての想いも聞く機会があった。

「長男としての役割を果たすことへの使命感はもちろんありましたが、何よりも生まれ育った場所、白川郷が好きだから、地元に帰ってきて家業を継ぐことに対して迷ったことはないです」建二さんは力強く語ってくれた。

 それだけ、本当にこの場所に愛着を持ち、このお仕事を楽しみなら続けているということが建二さんのお話の内容だけではなく、口調や表情からもひしひしと伝わってきた。

 

また来たい、と思ってもらうため

 

 共に働く仲間としてどんな人がいいですか?という質問に対して、白川郷が好きで温かい気持ちを持った方と是非働きたい、と建二さんは言う。

 取材中にも多くのお客さんが訪れ、スタッフのお客さんとのやりとりを見ることができたが、とても印象的だったのはスタッフはもちろん、お客さんにも笑みがこぼれていたことだ。それは今藤商店のスタッフ全員がまごごろをもってお客さんと接しているから生まれる表情だ。

「白川郷へ来る方の観光のメインはやっぱり合掌造りですから、私たちはそれに”食”の面から白川郷でのいい思い出をつくってもらえるようにしたいです。白川郷の良さを知ってもらって、また来てもらえるようにという想いを持ちながらお店に立っています。」

 愛する場所で、そこに訪れるお客さんと共に心から楽しみながら仕事をしている様子は本当に楽しそうに映った。

 

きっとまたここに来たくなる

 白川郷への愛情とお客さんへの思いやりに溢れた店内は、とても居心地がよく、建二さんの気さくなお話に時間もあっという間に過ぎてしまった。

 白川郷の良さを伝えたい、そんな想いのもと、お客さんのために一丸となって取り組んでいる今藤商店さん。

 落ち着いた柔らかな雰囲気の中にも、地元白川郷を大切に思う熱く強い気持ちを軸にもった建二さんはじめとする今藤商店は、訪れたお客さんがより白川郷を好きになってまた帰ってきたくなるような温かい場所だと感じた。

 

 

(有)今藤商店

【問い合わせ】05769-6-1041

【営業時間】9:00-18:00

【定休日】不定休

【所在地】岐阜県大野郡白川村大字荻町226

 

この記事を書いた人

児玉莉奈

静岡県掛川市出身、鳥取大学農学部三回生。

仕事は人生を豊かにするための手段でしかない、そう思って色々模索中。

人の話を聞くことと、答えのない話をすることと、音楽と、塩辛いものがすき。

全くそんなことないのに、どうやら周りからの第一印象はチャラチャラしてるように見えるらしい&隙がありありらしいので、そこが最近の悩み。

※本記事は9月3日~8日に白川村で開催された白川郷ヒト大学の「ローカルワーク編集合宿」で製作されました。

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