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17.09.13

Shirakawa Go Around編集部

村のしごと

求人募集中!

「つなぐ」を大切にする空間、山本屋

「『山本屋があるから白川村に行こう』、と言ってもらいたい」

そう話す山本さんの言葉はどれも飾りっ気がなく、ストイックだ。


山本屋7代目 山本桂諒さん

24歳で白川村に戻って来た山本さんは、民宿「山本屋」の7代目である。

夏季はお食事処として蕎麦を提供している山本屋の外観

 

飲食の営業を始めたのは10年前の夏の暑い時期だったという。取材当初は9月上旬で、縁側から晩夏の涼しい風が吹き込んでいた。自然と料理が楽しめる、趣ある店の雰囲気の中で、山本さんは誰もが馴染み深い蕎麦を提供している。

 

「料理にはオーガニック素材を使うなどして、実はこだわってるんだよね」

 

白川郷独特の田舎の土地、風景に癒されたいという目的で来られた都会の人たちに、少しでも自然に寄り添った料理を出すことでより一層健康になってもらいたい。

山本さんの優しさが、料理を通して伝わってきた。

高山にある「よしま農園」の梅干を使ったお蕎麦。地元の食材をふんだんに使っている

 

欲しい人材

山本屋さんの営業形態は、夏はお食事処、冬は民宿。

今回の求人は夏季の飲食営業での接客である。現在営業自体はご家族で切り盛りしているが、繁忙期は親戚の方も手伝いに来る。

基本的には接客を通して、その人なりの色を出せて、結果的にその人にとって一つのスキルアップに繋ればと考えている。

店内の様子。冬季には仕切りを入れ、宿泊の部屋の一つとして提供される

 

「夏は飲食の営業をして、冬は民宿してっていうサイクルが出来ている。だから、毎年その切り替えのタイミングで『去年よりこういうことしよう』ってチャレンジしてる。サービスを扱う商売をする上で、『おもてなし』っていう言葉に僕は違和感があって。おもてなしかどうかなんてお客さんが判断してくれたらいいことで、僕が一杯800円の蕎麦を提供して、他にも店の趣だとか、家内の接客だとかでおもてなしを感じてくれればそれでいい。『お客さんは神様』って思うんじゃなくて、自分と対等な『人』であることを尊重してサービスを提供したいし。今日できたサービスでお客さんがもし感動してくれたら、それはつまり『山本屋』っていう歴史を肯定された瞬間だと思うんだよね。そんな時は、『山本屋』を知ってくれてありがとうって思いながら、『だったら次はこれができるじゃん』みたいに、少しずつ成長出来たらいいなと思う」

意思をつなぐ

「50歳くらいになったら、宿一本でいきたい」

 

そう山本さんは話す。

実は、夏と冬で営業形態を変えたのは、実は山本さんが継いでから。しかし、これからもずっとこの形態を続けていく予定はないそうだ。

 

「僕が一番村の人の中で尊敬してるのは、白川郷で民宿をやってる女将さん。ストイックに体調管理をしなきゃいけないから、風邪を引いてもお客さんが期待してくれる以上は、昨日できたサービスの質を今日落としちゃいけない。そんな仕事をノンストップで続けている女将さんには頭が上がらない。何でそんなにタフなんだろうって思う。だから、50歳くらいになれば僕も女将さんみたいにしっかりするっていう見通しで、今は気持ちよく仕事ができたらいいなって」

 

山本さんには現在2人のお子さんがいる。

後世にも何かしらの形で「つながり」を残していきたいが、「民宿を継いでもらう」点には特別な思いがあった。

 

「僕は子どもに民宿の仕事を押し付ける気はない。でも自分の働き方を見せて、子どもたちに『帰ってきたい』と言わせたい。僕の前に7代も血を繋いできてくれた人たちがいる以上は、僕も後世に繋げたい気持ちがあって。侍は刀を構えた時から正面で勝負して、決して背かない。だから、親父の背中は小さいけど傷一つねえぞ。正面に傷はあるけど、全然逃げたことねえし、って。それを子どもたちが見てくれていれば、そのうちなるようになると思う」

夢へつなぐ

50歳をライフステージの次に進む目標としている山本さん。

その歳を迎える過程で、ある挑戦をしている。

 

「白川郷は今『観光都市』って呼ばれてるけど、合掌造りだってできた当時はもちろん世界遺産じゃなかった。たまたまそこで時間を止めてしまっただけで、たまたま山本屋があったのが白川郷で、しかもその構造が合掌造りで。僕としてはもしどこかに移住しても、そこで同じサービスを提供して成立できないと駄目だと思ってる。『白川郷の名前で商売してるの?』とか『白川郷だから成立してるんでしょ』なんて親の代から言われ続けてるから。でも、まだ白川郷とか合掌造りっていうネームバリューには勝てなくて。僕が50歳になった時には、『山本屋があるから白川郷行きたいな』って言ってもらえるようになっていたい。だから、今はインプットの時間に重きを置いて、自分の振り幅を広げたい時期かな」

 

様々なイベントを山本屋で開くことも振り幅の一つ。

山本さんが若い頃、白川郷はまだ交通の便が悪く、自身も車を持っていなかった。だから見たい、聴きたいと思ったアーティストをテレビ越しにしか見られなかったことが、田舎が嫌だったことの一つだと話す。

 

「よその土地に行かなきゃアートや文化に触れられなかったのが悔しかった。そうなると村の誰かがやってくれよって思いがちなんだけど、誰かにすがるのもずるい。だったら自分でやっちゃえって思った。例えば映画の上映だって、できる範囲自分でやればいいんだよ。白川郷なんて映画館はなくて当たり前。この人口密度で映画館の運営は無理だから。音楽やイベントをするにあたって、少し背伸びはしなくちゃいけないと思う。無理って言葉、僕は嫌いじゃなくて。ちょっと自分が無理して頑張れば、誰かの笑顔を作ってあげられるんだったらそんな良いことないじゃん。たかだか僕みたいな人間が、人様に何か感動を与えられる瞬間を作れるんだとしたら、それは本当にありがたいことだよね」


玄関付近に様々なジャンルのパンフレット。訪れる人々の興味を惹いていく

 

「今こうやって自由に商売ができてるのは、関わってきてくれた人たちの支えのおかげ」

 

素直でストイックな言葉の裏には、様々な人への感謝の思いが込められていた。

 

先を見据え、民宿と飲食の営業を展開している山本さん。

「世界遺産の老舗民宿」という肩書きに驕ることなく、何よりも縁あって山本屋を訪れてくださった方との「つながり」を大切にしていた。

そんな人情味あふれる山本屋で働くことで、あなたの生き方に対する価値観がさらに違って見えてくるのではないだろうか。

 

山本屋

【問い合わせ先】TEL:05769-6-1064

【営業時間】11時~15時(売り切れ次第閉店)

【定休日】不定休 (12月~4月中旬まで民宿運営)

【所在地】岐阜県大野郡白川村荻町775

※夏季を中心に飲食業に携わりたい方を募集。条件など要相談。村外の方でも大歓迎。まずはお気軽にご連絡を。

 

 

この記事を書いた人

内田なつの

岡山県出身 21歳。鳥取大学地域学部地域政策学科3年。

農山村の移住者がどんな仕事をしているのかが知りたくて、白川村にインターンで2週間滞在。

なっつにお酒を与える時は用法・容量をきちんと守ってください。笑

※本記事は9月3日~8日に白川村で開催された白川郷ヒト大学の「ローカルワーク編集合宿」で製作されました。

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